毎日の入浴習慣は、健康を維持する上で、手軽にできてなおかつ効果の出やすい方法です。しかし高血圧の方にとっては血圧の急激な変化を伴うため、どうしてもリスクと隣り合わせになってしまいます。注意点をきちんと守れば、お湯につかることは血圧を下げることにもつながりますから、リスクを理解した上で生活の中に取り入れてみてはいかがでしょうか。
それでは高血圧の方が入浴する際の具体的な注意点や、効果的な方法を解説していきます。
一般的に「高血圧症」と呼ばれるのは、繰り返し血圧を測定した際に、常に「収縮期血圧が140mmHg以上」か「拡張期血圧が90mmHg以上」の場合を指しています。
実は血圧が高いことが直接何らかの症状に結びつくわけではありません。しかし血圧が高い=常に血管に高い圧がかかっているということ。この状態が続いてしまうと体にも少しずつ問題が起こってきてしまうのです。
自分自身で不調を感じることがなくても、体の中では少しずつ血管が傷つき老化していっています。最も影響を受けやすいのは血管の多い器官、つまり脳や腎臓、心臓、目の網膜などで、高血圧の方ほど心臓や血管系の病気にかかりやすく、死に至る割合も高くなっています。
毎年の健康診断で血圧が高い傾向にある方は、特に自覚症状がない場合でも、血圧を下げる習慣を日常生活に取り入れていく必要がありそうです。
では実際に高血圧の方がお風呂に入った時、体にはどのような変化が起こるのでしょうか。
まずは体温と血圧の急激な変化です。特に寒さの厳しい冬場の入浴では、
温かい部屋 →寒い脱衣所・浴室 →浴槽内の熱いお湯
と温度差の激しいところを行ったり来たりします。すると血圧もそれに伴って急激に上がり下がりするため血管にかなりの負担がかかってしまいます。
また入浴中は浴槽内の水圧も負担となります。
それでは日常的に血管に負荷のかかっている高血圧の方が入浴する際、どのような点に注意していけばよいでしょうか。
まず入浴の前に脱衣所、浴室を十分暖めておくことが大切です。一番の問題は、急激な温度差による血圧の上昇・下降ですから、温度変化を最小限に抑える対策を必ず行ってください。
近年ではコンパクトなセラミックヒーターなどの暖房器具を手軽な価格で購入できます。もし自宅にこのような小型の暖房器具がない場合は、季節の変わり目に設置を検討してみてはいかがでしょうか。
浴室に入ったら、すぐお湯につかるのではなく、必ず足元から上へ上へとかけ湯をしていき、徐々に体を温めていくようにします。
お湯に浸かる際は、つい寒いからと肩まで浸かってしまいがちですが、水圧で心臓に負担がかかるため半身浴がおすすめです。38度から40度のお湯に10分程度つかるのがよいでしょう。
お湯からあがるときは、急に立ち上がってしまうと血圧の調整が追いつかず、立ちくらみが起こることもあります。手すりなどにつかまりゆっくり立ち上がるようにしましょう。
暖かいお湯につかることで、発汗が促され、体内の水分が汗として出ていってしまいます。水分が不足すると血液の粘度が高まり血液がドロドロになってきてしまいますので、入浴後は積極的に水分を補給するようにしましょう。
高血圧の方にとって、冬場の入浴は特に慎重になってしまいがち。ですが自宅で手軽に血流促進効果を得られる入浴は、できれば積極的に生活に取り入れたいものです。
そこで高血圧の方が湯船に浸かる際には、入浴剤に注目してみるのはいかがでしょうか。
血管の拡張作用があるということで、欧米では古くから「炭酸泉」が血圧疾患の治療に利用されてきました。炭酸泉とは天然の二酸化炭素を含んだ温泉のことで、お湯に溶け込んだ二酸化炭素が血管内に入り込むと、血管を拡張するための物質が分泌され、毛細血管が広がって血圧を下げてくれるのです。
そんな嬉しい効果のある炭酸泉ですが、頻繁に通うとなるとかなりハードルが高いですよね。そこで二酸化炭素が発生する入浴剤を使用することで、自宅でも気軽に炭酸入浴を行うことができるんです。
炭酸入浴剤はドラッグストアやインターネットでもすぐに手に入れられますから、ぜひお気に入りのものを見つけてみてください。毎日10分程度と限られた時間の入浴でも、血管を広げる効果がより期待できますよ。
高血圧の方にとって、湯船につかる入浴はリスクを伴うため、どうしてもシャワーで済ませてしまいがちです。しかしかかりつけの医師と相談し、どのような点に注意すべきかを理解しておけば、毎日の入浴習慣が今後の健康維持に役立ってくれるはずです。
掲載の記事・写真・イラストなど、コンテンツの無断複写・転載等を禁じます。
Copyright© P&F LLC All rights reserved.